魏志倭人伝

「魏志倭人伝」の二著の批評

(3)比評の視点

 この二著の他、かつて読んだ次の本にザッと目を通した。③『「邪馬台国」はなかった』(古田武彦著、ミネルヴァ書房朝日文庫④『倭人伝を徹底して読む』(古田武彦著、ミネルヴァ書房朝日文庫)、⑤『俾弥呼』(古田武彦著、ミネルヴァ書房⑥『新「日本の古代史」(上)』(佃收著、星雲社⑦『伊都国と渡来邪馬壹国』古代史の復元2(佃收著、星雲社⑧『邪馬台国ハンドブック』(安本美典著、講談社⑨『邪馬台国の秘密』(高杉彬光著、光文社文庫もちろんこれ以外にも、重要な問題を提供している本は沢山ある。この拙文を読んでいただく方々の参考のために、一応、私たちが参考にした本を揚げた。
 卑弥呼はどのような女王であり、女王がいたとされる邪馬壹国は何処にあったのか、という問題は大変興味深い。しかし、この問題は、日本の古代史の中で、3世紀に卑弥呼や邪馬壹国がどういう役割を果たしたか、という視点から考えるべき問題である。皇国史観によって、西暦紀元前660年に神武天皇から始まる万世一系天皇によって作り上げられてきたのが日本だと考えている人は、極めて少ないと思われる。また、朝鮮半島から渡来した勢力によって築かれ、言わば朝鮮半島文化の亜流が日本文化だと考えている人は、ほとんど居ないだろう。日本という国がどのように作られてきたかを知ることは、これからの日本が世界の中でどのように生きていくかに大きくかかわっている。


 江戸時代に国学の隆盛によって『古事記』、『日本書紀』などが研究されるようになり、戦前の皇国史観を経て、戦後は一転して「第16代の応神天皇以前の歴史は虚妄である」とする合理主義・実証主義が振りかざされた。そのような中で、1970年代以降には、既存の日本歴史学会とは別のアマチュアによる歴史研究が盛んになり、象牙の塔に閉じこもっている専門学者をたじたじとさせた、と言われる。また、様々な遺跡の発見があり、中国大陸や朝鮮半島の文献や遺跡等についての知識も次第に蓄積されるようになり、東アジアの中での日本の歴史を実証的にも考えることができるようになってきた。ようやく、日本の古代史を明らかにできる時代が到来しているのではないだろうか。これが、十分な知識のないことを省みず、佃收氏が研究されてきたことを学びながら、私たちが古代史の学習に取り組んでいる理由である。

  日本古代史の復元 -佃收著作集-

  日本古代史についての考察